増え続ける現代病「難聴」へのアプローチ


難聴は、生活上のハンディキャップの原因として全世界で最も多いものの一つとされています。会話に補聴器を要する中等度以上の難聴は本邦で600万人、世界では5億人とされ、実に65歳以上の30 〜 40%が該当します。軽度難聴の数はさらに輪をかけて多く、世界で30億人とされます。難聴はQOL(生活の質)の低下のみならず、高齢者のうつ病や認知症発症のリスク要因として知られており、その社会的損失は年間で750 billion USドル(75兆円)にも上ります。

近年スマートフォンなどによる難聴が話題になっています。昨今の研究によれば幼少期に雑音を多く浴びると、成人になってからの難聴の進行が早くなるとされ、2060年には難聴人口は倍増すると予測されています。このため、WHOでも”World Hearing Day”を設定し、難聴予防に向けた啓蒙活動を展開しています。さらに本邦は世界に名だたる超高齢化社会であり、団塊の世代が高齢者となる2025年問題において、難聴人口は1000万人と予測されており、これは糖尿病の全人口に匹敵するものです。

このように、難聴という症候の医学的・社会的インパクトはきわめて大きなものですが、依然としてその原因治療に乏しく、特に慢性感音難聴においては、長い間、新規治療法が上梓していません。現状では、進んでしまった難聴に対して補聴(補聴器など)が、唯一の対処法です。近未来の治療法を開発すべく、世界でベンチャー企業が開発にしのぎを削っていますが、これらは遺伝子治療と再生医療に著しく偏っており、加齢による難聴をはじめ、十分な治療法を得られる兆しは見えていません。